組織の「リスク感度」と風土づくりに関する実態調査
実施期間:2025/11/4~11/30
有効回答数:140件
― “気づく・伝える・動く”力を高めるには ―
コンプライアンス担当者として、「なぜ問題が上がってこないのか」「なぜ気づかれないのか」
という課題に直面することも多いのではないでしょうか。
本アンケートでは、担当者の視点から見た“リスク感度”と“風土”の現状を探ります。
あなたの会社では、社員が「気づき」を共有する文化がどの程度根付いていると感じますか?
本調査から、日本企業における「気づき」を共有する文化は、制度としては整備されつつあるものの、実態としては十分に機能していない現状が浮き彫りとなった。「問題意識を共有する文化が十分にある」と回答した組織は14.3%にとどまり、4割超(40.7%)が「形式はあるが実態が伴っていない」と感じている。また、「意見を出しにくい雰囲気が強い」とする声も15.7%あり、声を上げづらさが依然として組織リスクとして存在している。
自由記載からは、この数値の背景が具体的に見えてくる。一部では、インシデントを即時に共有する厳格な報告体制や、階層を超えた定期報告により、現場の気づきを迅速に吸い上げる仕組みが機能している例も確認できた。しかし多くは、スローガンや規程が形骸化し、上司や役員に関する問題ほど声を上げにくい実態や、研修を実施しても「自分事」として受け止められないという課題を抱えている。
特に注目すべきは、「問題が顕在化して初めて重大さに気づく」という声に象徴されるように、リスクを未然に共有する文化が十分に根付いていない点である。一方、若手社員を中心にハラスメントへの感度が高まり、通報や相談が活発化している兆しも見られる。本調査は、制度整備の先にある「安心して気づきを口にできる風土づくり」こそが、これからのコンプライアンスの核心であることを示している。
リスクや不正の兆候を早期に察知できない背景として、大きいと感じる要因はなんですか?(複数回答)
本設問の結果から、リスクや不正の兆候を早期に察知できない最大の要因は、「気づいても動かない」「そもそも疑問を持たない」という組織の感度低下にあることが明確になった。「問題意識そのものの欠如(慣れ・無関心)」が57.1%と最も多く、「報告しても変わらないという諦め」(40.0%)、「上司や経営層への心理的距離・恐れ」(34.3%)が続いている。制度以前に、人や組織の意識構造が早期察知を阻んでいる実態がうかがえる。
自由記載では、その背景がより具体的に語られている。多忙さに追われ「立ち止まって考える余裕がない」、問題提起をすると自分や部署の負担が増えるため避けてしまう、といった声は、日常業務とリスク感知が分断されている現状を示している。また、「今までは大丈夫だった」という成功体験や性善説への過度な依存、違法・不適切な行為が慣習として定着しているケースも散見され、無自覚なままリスクを見逃している危うさが指摘された。
さらに、管理職やコンプライアンス担当者の感度不足、あるいは形骸化に対する指摘も多い。数字の異変には気づけても、人の変化や現場の違和感を拾うには対話と観察の時間が必要であり、そこに十分なリソースが割かれていないという声は象徴的である。
本結果は、内部通報制度やルールの有無以上に、「疑問を持つ力」と「声を上げても無駄ではないという実感」を組織全体で共有できているかが、リスク感度を左右することを示している。早期察知とは仕組みではなく、日常の判断と行動の積み重ねであることが、改めて浮き彫りになった。
今後、「気づく・伝える」風土を醸成するために、必要だと思うアプローチはなんですか?(複数回答)
本設問の結果から、「気づく・伝える」風土を醸成するために最も求められているのは、制度や掛け声ではなく、現場で“使われる仕組み”と“聴く側の変化”であることが明確になった。最多回答は「現場目線での小さな気づき共有の仕組みづくり」(62.1%)であり、「上司・管理職層へのマネジメント研修」(42.1%)、「経営層による発信・ロールモデルの明確化」(30.0%)が続いた。この結果は、トップダウンとボトムアップの双方が欠けた状態では、風土は定着しないという認識を示している。
自由記載からは、仕組みや制度があっても「意識が伴わなければ形骸化する」という強い危機感が読み取れる。特に多く挙げられたのが、心理的安全性の不足である。上司に相談しても受け流された経験や、「忙しい」という理由で真剣に聴いてもらえなかった過去が、部下の沈黙を生んでいるという指摘は象徴的だ。また、「何を気づきと捉え、どこに伝えればよいのか分からない」という声からは、判断基準や具体例の共有不足という実務的課題も浮かび上がる。
さらに、経営や本社任せにせず、「現場こそが風土をつくっている」という当事者意識の欠如を問題視する意見も目立った。ロールモデル不在、管理職の聴く力・共感力の不足が、制度への不信感を増幅させている構図である。
本設問が示すのは、「心理的安全性」「知識・判断基準」「日常的な対話」という三要素を、現場レベルで循環させることの重要性である。声を上げることが“評価される行為”になるとき、初めて「気づく・伝える」風土は実効性を持つ。
アンケート結果・一覧
- 組織の「リスク感度」と風土づくりに関する実態調査
- トップの私的不祥事と辞任の線引きについてのアンケート
- 介護離職を防ぐコンプライアンス対応状況
- 2026年施行「改正下請法(取適法)」への対応状況
- 内部通報制度の環境や体制の実態調査
- コンプライアンス推進の観点からの生成AIの業務利用に関する課題や取り組み状況報告
- 経営層や上級管理職におけるコンプライアンス報告
- フリーランスとの取引に関するアンケート
- コンプライアンス部門の役割に関するアンケート
- オンラインカジノへの企業対応についてのアンケート
- D&I推進とコンプライアンスウェビナーについての事前アンケート
- カスハラ防止ウェビナーについての事前アンケート


