経営層や上級管理職におけるコンプライアンス報告
実施期間:2025/5/7~5/31
有効回答数:109件
近年、企業不祥事において、役員や上級管理職による不適切な言動が一因となる事例が見受けられます。
トップマネジメントの行動は企業文化全体に深く影響を及ぼすことから、経営層や上級管理職におけるコンプライアンス意識の継続的な啓発と従業員が安心して通報できる環境の整備は、組織運営上ますます重要性を増しています。
本アンケートは、役員や上級管理職向けコンプライアンス研修の実施状況および通報制度の実効性を把握し、健全なガバナンス体制の強化に資することを目的とするものです。
貴社において、役員や上級管理職を対象としたコンプライアンス研修は実施されていますか?
コンプラインス研修を「毎年定期的に実施している」は32.1%にとどまり、「不定期実施」(26.6%)や「実施していない」(28.4%)が依然として多い。
自由記載からは、研修が形骸化していることや、経営層に当事者意識が乏しいという課題も浮かび上がっている。単なる形式的な開催ではなく、役員・上級管理職が自らの言動が企業文化に与える影響を認識し、組織の信頼を支える存在であるという自覚を促す内容への再設計が求められる。また、現場のリスク事例を題材としたケーススタディや双方向の対話形式など、受動的な学習からの脱却も必要である。
役員や上級管理職の不適切な言動に対して、従業員が不安なく相談や通報ができる雰囲気や意識づくりはどの程度進んでいると感じますか?
「安心して声を上げられる状態にある」と回答したのはわずか9.2%であり、「対応が必要な状態」(45.9%)、「部分的に課題がある」(29.4%)という回答が大多数を占めた。
自由記載では、相談がためらわれる理由として「上層部への忖度」や「報復への不安」「制度の信頼性の欠如」が挙げられている。制度の整備だけでは相談文化は根付かず、経営層が日頃からオープンな対話姿勢を示すことが不可欠である。また、相談が実際に改善へつながったという経験の共有や、対応結果の社内フィードバックも信頼構築に有効である。
過去1年以内に、従業員から役員や上級管理職の不適切な言動についての相談や通報がありましたか?
「過去1年以内に相談や通報があった(対応済み)」という回答は32.1%である一方、「なかった」が49.5%に達している。
だが、自由記載には「実際には相談できずに埋もれている」「相談しても無意味と見なされている」といった声があり、表面上の数値以上に問題が潜在化している可能性が高い。不適切な言動が経営層から発せられた場合、その影響は全社に波及しやすく、放置すれば企業文化そのものを損なう。通報制度の実効性確保に加え、組織として継続的に「対処された」という実感を職場に残すことが、再発防止と信頼回復の鍵となる。