金型等の無償保管で勧告 東芝子会社
2026年1月、公正取引委員会は、下請事業者(現:中小受託事業者)に金型等を無償で長期間保管させていたとして、東芝子会社の東芝産業機器システムと東芝ホクト電子に対し、下請法(現:取適法)違反で再発防止や費用支払いなどを求める勧告を行いました。
両社は2024年2月以降、計61の事業者に対し、モーターや半導体製造部品の製造に用いる金型等約2,000個を、発注がない状態のまま無償で保管させていました。
また、公正取引委員会は、親会社である東芝の金型管理に関するガイドラインや契約書のひな型が違反の一因となった可能性があるとして、同社にも見直しを申し入れました。
※下請法は2026年1月1日より改正され「取適法」として施行されていますが、本件は改正前の下請法の適用事案です。
【このニュースに一言】
発注が途絶えているにもかかわらず、金型を「いつか使うかもしれないから」と無償で預け続ける行為は、取適法(旧下請法)が禁じる「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する典型的なケースです。
金型は発注元独自の仕様で作られるため、受託側が他社の仕事に転用することはまず不可能です。つまり、発注がない期間、その金型は受託側の工場でただ場所を占有し、棚卸しやメンテナンスといった「見えないコスト」を一方的に強いるだけの存在になってしまいます。こうした負担を、合理的な対価も示さず受託側に押し付けることは、取引上の優越的な立場を背景とした不当な要求とみなされるリスクが非常に高いと言えます。
ここで注意したいのは、「受託側から文句が出ていないから大丈夫」という理屈は通用しないという点です。今後の取引継続を考えれば、受託側が本音を飲み込んで負担を受け入れているケースは少なくありません。たとえ形式上の合意があったとしても、実態として不公平であれば当局からは厳しく判断されます。
また、本件で特筆すべきは、親会社が作成した「ガイドライン」や「契約書ひな型」が違反を誘発したと指摘されている点です。現場の判断ミスだけでなく、会社として定めたルールそのものが時代や法令に逆行していないか、今一度チェックする必要があります。
「使い道の決まっていない金型」を放置せず、定期的な棚卸しによって回収・廃棄の基準を明確にすること。そして保管を継続するならばその費用負担について真摯に協議すること。こうした当たり前のルール化こそが、現代のパートナーシップを維持するための必須条件と言えるでしょう。
