知財・ノウハウの不当要求が顕在化 公取委が是正へ

公正取引委員会は2026年3月、中小企業の知的財産やノウハウに関する取引実態の調査結果を公表しました。その内容は、秘密保持契約(NDA)の締結拒否や、不当なデータ・ノウハウの開示要求など、「優越的地位の乱用」に該当しかねない事例が後を絶たない実態を浮き彫りにしています。調査によると、知財を保有する企業の約16%が、不利益を承知で取引条件を受け入れたと回答。なかには著作権の無償譲渡を強いられるケースも確認されました。こうした事態を重く見た公取委は、取引の適正化に向けた指針を策定し、企業への改善を強く促していく方針です。

【このニュースに一言】

この問題は、一見すると「契約条件の適否」に見えますが、その本質は「断りたくても断れない」という歪な構造にあります。調査で判明した中小企業の「今後の取引への影響を懸念して、不利な条件を飲んだ」という声が、それを象徴しています。つまり、法令や契約条項よりも先に、「立場の優劣」が現場の意思決定を縛ってしまっているのです。
この点を意識せず、表面的・形式的な合意をもって問題がないとすることは、コンプライアンス意識として不十分な判断だと思います。留意すべきは、合意の実態がどうなのかを「立場の優劣」を踏まえて判断することです。
中小企業の現場を悩ませるのは、法的にグレーな、それでいて断りづらい要求です。しかし、「このくらいなら……」という小さな妥協が積み重なれば、企業の生命線である知財は流出していきます。中小企業が断るべきときに正しく断れる土壌を、取引関係の中に形成することが大切です。そして、優位な立場にある大手企業も、知らず知らずのうちに取引先へ同じような無言の圧力をかけてはいないか。この機会に、自社の調達や知財管理のあり方を改めて点検してみる必要がありそうです。