大手鉄鋼メーカー、長年のデータ改ざんが発覚

2017年10月、大手鉄鋼メーカーは、グループ企業も含めた複数社、複数事業部において、品質データの偽装があると発表した。 記者会見で、組織ぐるみで偽装行為を行っていたことを認めている。

 

【このニュースに一言】

※今回は、某大手企業の元役員からの寄稿です。

・データ偽装事件に思う。

またしても伝統企業によるデータ偽装問題が取り上げられている。

今回の問題でも取り上げられているのは、これが組織ぐるみであったのか否かという点である。筆者はこれが現場だけの問題であったとはとても思えないのである。どこかの時点でこのような不正が行われていた事は経営幹部の耳に入っていたと考える方が自然であろう。

現在はどこもコンプライアンス教育が(大なり小なり)行われており現場ではこうした偽装行為に疑問を持つ社員は必ずいた筈だからである。ではこれを耳にした経営幹部はこれをどう受け止めたのかを知りたいところであるが以下は筆者の推察である。

まず経営幹部はこうした違法行為がどれくらいの規模で、どれくらいの期間行われてきたかを調べさせた、と考えられる。さらにはこうした情報をデイスクローズした場合の経営数値上のダメージを試算させた、と思われる。そして規模が大きければ大きいほど、期間が長ければ長い程、また経営上のダメージが大きければ大きい程デイスクローズはしにくくなったものと思われる。本来幹部がここで最も考えなければならないのは顧客保護である。同時にデイスクローズしなかった場合の信用失墜の大きさなのであるが、その事が経営陣の中で意思統一されていなかったのではないだろうか。発覚しなければいい、そんな甘い誘惑にかられた幹部がいたとは思いたくないが。

コンプライアンス推進に関して言えば、これは社員に対してしっかり行うものであって、今さら経営陣に対し入念に行うものではないと思われてきた節もある。しかし多くの不正事件を見て行くと経営陣の判断がぶれている例を散見する。今一度経営陣の意識変革を徹底すべき時ではないだろうか。守るべきは顧客であり自社利益ではないのである。