『眉山』 太宰治 著

 『眉山』は、飲食店で働く「眉山」というあだ名で呼ばれている女中の話で、店の常連客である「僕」の視点で語られます。
 「僕」たちは、彼女が慌ただしく階段を上り下りして頻繁にトイレに行くこと、あるときは慌てすぎて味噌の入った重箱に片足を突っ込んだことなど、彼女のそそっかしさや失敗談を話題にして笑っていました。ところが後に、彼女が腎臓結核を患っており、先が長くないことが明らかになります。
 眉山の病気を知った「僕」たちは、だからトイレが近く、いつも慌ててトイレに向かっていたのだと理解します。そして、「僕」は思わず、「いい子でしたがね」と口走ってしまうなど、物語の終盤では、自分の彼女への言動を後悔しているような様子が読み取れます。
 「僕」は、眉山を心から嫌っていたわけではなく、むしろ、愛着を持っていました。しかし、彼女の振る舞いや失敗を、つい笑いのネタとして話して、からかっていました。

 人の外見や言葉遣い、立ち振る舞いなどには、さまざまな事情があるかもしれません。その事情がわからないなら、安易に決めつけたり、からかったりするべきではありません。それは相手への思いやりであると同時に、自分自身が傷つくことを避けるためでもあります。

参考:眉山(青空文庫)