『鶴の恩返し』

あらすじ(※諸説有り)
 猟師の罠にかかった鶴を助けた乏な老夫婦のもとに、身寄りの無い女性が訪ねてきます。三人は実の家族のように仲を深め、女性が織る美しい布を町で売ることで裕福に、幸せに暮らしていました。女性は老夫婦に、機織りしているところを「絶対に覗かないで」と言います。ある日、老夫婦が好奇心に負けて中を覗くと、そこには女性ではなく、鶴の姿がありました。「助けてもらった鶴です。恩返しに来ましたが、もうお別れです」と告げ、飛び去ってしまうのでした。

 「覗かないで」と言われていたのに覗いてしまったのは、なぜでしょうか。老夫婦は好奇心に駆られ、「機織りしている姿くらい、見られても問題ないだろう」と考えたのかもしれません。しかし、鶴にとっては「見られたら、正体がバレてしまい、もう一緒には暮らせない」と、その後の生活に影響するほど重要なことでした。

 例えば性自認や性的指向、家庭環境、病気・ケガなど、どうしても知られたくないことは、人それぞれあるものです。それを好奇心から詮索したり、無理に知ろうとしたりするのは、個の侵害です。興味本位ではなく、「相手のためを思って」だとしても、相手の意に反して無理に聞き出そうとするのはやめてください。また当然、秘密として聞いた内容を、合意なく勝手に他の人に話すのもダメです。

 職場においても、もし、そうした行為があったら…従業員も鶴のように、去ってしまうかもしれません。